良い設計は、人を自由にする

エンジニアの時間は、未来への投資。

システムを使っていて、ときどき、

「あ、これ、いいな」

と思うことがあります。

オンラインで買い物をしているとき。

仕事で毎日使うシステムを操作しているとき。

何かを申し込んだり、予約したりしているとき。

特別に目立つ機能ではありません。

でも、

前に入力した情報を、もう一度入力しなくていい。

次に何をすればいいのか、すぐにわかる。

間違えたとき、どこを直せばいいのかわかる。

あとで必要になりそうな情報が、ちゃんとそこにある。

そんな小さなところで、

「わかってる!」

と思うことがあります。

誰かが、先に考えてくれている

そういう機能は、偶然そこにあるわけではありません。

誰かが、

「ここで迷うかもしれない」

「これは二度入力したくないだろう」

「失敗したら、次にどうすればいいか知りたいだろう」

「この情報は、あとでもう一度確認したくなるだろう」

と考えたから、そこにあります。

ユーザーがそこで考えなくてもいいように、

設計する人が、先に考えている。

エンジニアが時間を使って考えたことで、

そのシステムを使う何百人、何千人、何万人もの人が、少しずつ時間を使わなくて済むようになります。

誰かが使った時間が、別の誰かの時間になって返ってくる。

それは、エンジニアリングが生み出す価値の一つだと思います。

速いだけではない

もちろん、使いやすいシステムは時間を短縮してくれます。

入力が少なくなる。

操作が減る。

処理が早く終わる。

でも、それだけではありません。

迷わなくていい。

覚えておかなくていい。

何度も確認しなくていい。

失敗しても、次に何をすればいいかわかる。

「これで合っているのかな」と不安にならなくていい。

数字で測れる数秒や数分だけではなく、

人の頭の中にある小さな負担まで減らしてくれる。

良い設計が生み出す価値は、

「タイムパフォーマンス」のような言葉だけでは、少し足りないように思います。

このシリーズで考えてきたこと

Engineering Timeでは、これまでいろいろな角度から「設計」について考えてきました。

本当に作る必要があるのか。

すでにある仕組みを使えないか。

エンジニアの時間を、どこに使うのか。

何を自動化し、どこに人を残すのか。

認証に失敗した人を、そこで行き止まりにしないためにはどうするか。

一つの方法が使えないとき、別の道を用意できないか。

正常系だけではなく、うまくいかなかったときまで設計できているか。

そして、今日の選択によって、未来の選択肢を閉じていないか。

一見すると、それぞれ違う話です。

でも、振り返ってみると、その先にはいつも同じものがありました。

人です。

システムの都合から、人を自由にする

システムには、システムの都合があります。

入力してほしい情報がある。

守らなければならない手順がある。

認証が必要になる。

外部サービスが止まることもある。

すべての制約をなくすことはできません。

でも、その制約をそのままユーザーへ渡す必要もありません。

人がシステムに合わせるのではなく、

できるだけシステムのほうが、人に合わせる。

覚えておかなくてもいいようにする。

迷わなくてもいいようにする。

失敗しても戻れるようにする。

状況に合わせて別の方法を選べるようにする。

そうすることで、

人はシステムそのものについて考える時間を減らして、

本当にやりたかったことへ戻ることができます。

買い物をする。

仕事をする。

誰かと話す。

何かを作る。

家族と過ごす。

次のことを考える。

良い設計は、人の時間を、人へ返します。

デジタルがくれた自由

先日の「デジタルの日」に、Xoxzoの働き方について書きました。

Xoxzoは創業以来、フルリモートで仕事をしています。

私自身、この働き方によって通勤から解放され、家族のそばにいながら仕事をするという選択肢を得ました。

デジタル技術がくれたものは、単に「オンラインで仕事ができる」という機能ではありませんでした。

どこで暮らすか。

どう働くか。

家族とどう過ごすか。

そんなことを、自分で選べる余地でした。

システムの設計も、同じなのかもしれません。

技術そのものが目的なのではなく、

その技術によって、人にどんな選択肢や余白を残せるか。

そこまで考えることが、設計なのだと思います。

エンジニアの時間は、未来への投資

今日、あるエンジニアが一時間かけて、

「ここ、もう少しわかりやすくできないかな」

と考える。

その一時間によって、

明日から何千人ものユーザーが迷わなくなるかもしれません。

今日、失敗したときの道を一つ設計しておくことで、

いつか困った誰かが、そこで立ち止まらずに済むかもしれません。

今日、交換できるようにAPIを設計しておくことで、

数年後のエンジニアが、新しい方法を選べるかもしれません。

エンジニアの時間は、

コードを書くためだけの時間ではありません。

未来の誰かが使わなくて済む時間を、先に使うこともできます。

未来の誰かが、

迷わなくていいように。

困らなくていいように。

同じことを繰り返さなくていいように。

そして、自分が本当にやりたいことに時間を使えるように。

それは、小さな機能として実装されるかもしれません。

ユーザーは、その機能を作った人の名前さえ知らないかもしれません。

それでも、使った瞬間に、

「あ、これ、いいな」

「わかってる!」

と思ってもらえる。

その小さな瞬間の向こうに、

誰かが設計に使った時間があります。

エンジニアの時間は、未来への投資です。

そして、その投資が生み出すものの一つが、

人の自由なのだと思います。


10回にわたってお届けした Engineering Time は、今回でひと区切りです。

何を作るか。

何を作らないか。

何を機械に任せるか。

どこに人を残すか。

そして、誰のために設計するのか。

技術はこれからも変わっていきます。

でも、その先に人がいることは、きっと変わりません。

良い設計は、人を自由にする。

Engineering Timeをお読みいただき、ありがとうございました。

横山 愛子

横山 愛子

顧客支援及び運営担当

2014年1月に入社。関西外国語大学卒業後、貿易商社での勤務、オンラインストアの立ち上げ、運営、15年に亘る海外在住経験あり。幅広い視野を持って、お客様とのコミュニケーションに努めたいと思っております。