自動化すると、人はいらなくなる?
「この仕事、自動化できないかな。」
システムを作っていると、そんな場面がたくさんあります。
データを入力する。
同じ内容を何度も確認する。
決まった時間に通知する。
毎日同じレポートを作る。
条件に合うデータを探す。
こうした仕事をシステムに任せることができれば、人の作業は減ります。
では、自動化とは、
人を減らすためのものなのでしょうか。
私は、少し違うと思っています。
人には、人が得意な仕事がある
機械が得意なことがあります。
同じ処理を何度も正確に繰り返すこと。
大量のデータを処理すること。
決められた条件を確認すること。
決められた時間に処理を実行すること。
一方で、人が得意なこともあります。
「何か困っていそうだな」と気づく。
いつもと違う状況を見て判断する。
相手の話を聞く。
事情を理解する。
どうすればもっと良くなるかを考える。
そして、ときには、
「今日は、この人にはいつもと違う対応をしたほうがいい」
と判断する。
こうした仕事まで、すべて機械に任せる必要はありません。
自動化は、人の時間を取り戻す
例えば、お客様から問い合わせが届いたとします。
受付番号を発行する。
担当者へ通知する。
問い合わせ内容を記録する。
受付完了のメッセージを送る。
こうした決まった処理は、システムが得意です。
その部分を自動化できれば、人は、
「この人は、何に困っているんだろう。」
「本当に聞きたいことは何だろう。」
「どう説明すれば、安心してもらえるだろう。」
ということを考えるために、時間を使えます。
自動化によって減らしたいのは、
人そのものではなく、人がやらなくてもよい仕事。
そして、そこで生まれた時間を、
人にしかできない仕事へ返す。
それが、自動化の大切な役割のひとつではないでしょうか。
すべてを自動化しなくてもいい
自動化を考え始めると、
「あれも自動化できる。」
「ここも自動化できる。」
と、どんどん範囲を広げたくなることがあります。
でも、技術的に自動化できることと、
自動化したほうがよいことは、
必ずしも同じではありません。
例えば、
予約確認のSMSは、自動で送ってもいい。
注文受付の通知も、自動でいい。
システム障害を担当者へ知らせることも、自動化できます。
でも、
困っているお客様の話を聞くこと。
例外的な状況を判断すること。
相手の事情を考えて対応を変えること。
そういうところには、人がいる価値があります。
だから設計するときには、
「どこまで自動化できるか」だけではなく、
「どこから人が関わるべきか」も考える。
その境界線を考えることも、システム設計です。
人が、人らしい仕事をするために
良い自動化ができると、
人の仕事がゼロになるのではなく、
仕事の中身が変わります。
入力する時間が減る。
確認する時間が減る。
同じメールを書く時間が減る。
その代わりに、
考える。
判断する。
工夫する。
話を聞く。
誰かを助ける。
そんな仕事へ、時間を使えるようになります。
そして、これはお客様のためだけではありません。
そのシステムを使って働く人の体験も、良くすることができます。
自動化の向こう側にいるのは、
ユーザーだけではありません。
そこで働いている人もまた、システムの利用者なのです。
暖かい自動化は、人を残す
以前、このブログでは「暖かい自動化」について考えました。
自動化しても、相手への思いやりは残すことができる。
そして今回、もうひとつ付け加えたいと思います。
暖かい自動化は、人が必要な場所に、人を残します。
機械に任せられることは、機械へ。
人が考えたほうがいいことは、人へ。
その役割を丁寧に分けることで、
システムは人の仕事を奪うものではなく、
人の仕事を助けるものになります。
Engineering Time
エンジニアが自動化によって生み出せるものは、
処理速度だけではありません。
そこで働く人の「時間」も、生み出すことができます。
その時間で、
もっと考えられる。
もっと工夫できる。
もっと人と話せる。
もっと大切な仕事ができる。
自動化とは、人を減らすことではない。
人が、人らしい仕事をするために。
それもまた、エンジニアがシステムによって生み出せる価値なのだと思います。