1982年にGSMが開発される何年も前から電気通信サービスとしてのテキストメッセージングはすでに何年もの間、存在していました。(リンク先英語) その時代に存在していたメッセージングシステムは次のようなものでした。
• 移動体通信として使えないもの、例えばファクシミリ、テレックス、電子メール。
• 移動体通信として使えるもの、英数字の無線ページャーやボイスメール。
ポケベルは一方通行のコミュニケーションで、受け取り通知や到達保証はありません。 ボイスメールの受信者がテキストメッセージで直接返信する方法はありませんでした。 ということで、このようなモバイル通信の方法は、理想からは程遠いものでした。
シンプルで明快な、双方向のテキスト通信を提供するという目的のもと、 北欧の通信事業者およびドイツとフランスの通信事業者たちから、GSM上のサービスとしてのテキストメッセージング(GSMウェブサイトより) がそれぞれの方式で提案されました。
1983年から1984年にかけての2年の間に、フランスとドイツの協働プログラムが 専用のサービスセンターを利用し、GSM通話システム回線の既存の信号路を通じてテキストメッセージを送信するサービスを、提案しました。
1985年から1986年の期間に、GSMの委員会がショートメッセージサービス(SMS)サービスの機能を策定しました。 ドイツとフランスの貢献に寄るところが大きかったようです。 1987年以降、SMSの技術的な実現は Drafting Group Message Handling と呼ばれる小規模なグループと、 および関連するその他欧州の国々からの協力によって標準化されました。
SMSはネットワークによって通知や保証がなされるポイント・ツー・ポイントのサービスとして設計されました。 これは、携帯電話が圏外や電源オフの際にも後からSMSが届けられるように(音声通話のようなリアルタイムではなく)ストア・アンド・フォワードモードで運用されました。 SMSサービスは音声通話用に取り置かれた専用の回線交換通信ではなく、信号リンクを使用しています。 このため、SMSは通話中の音声通話と干渉せず、ユーザーが電話で話している最中にも送信することができます。 加えて、SMSセルブロードキャストが地域サービス、天気、交通情報のために実現されました。 セルブロードキャストは93文字、ポイント・ツー・マルチポイントをサポートしていて、通知や到達保証はありません。
優先度の低い信号チャネルを利用したSMSの140文字の制限は、160文字まで拡張が可能です。 SMSは7ビットの160文字、8ビットの140文字、またはヒンディー語、アラビア語、中国語、韓国語、日本語、ロシア語などといった言語の エンコードに利用される16ビットの70文字として送受信が可能です。 160文字に制限されていることで、例えばtoの代わりに2、greatはgr8、beforeでなくb4、といった、多くのクリエイティブで有名な略語が生まれました。
最初のSMSが送信されたのは1992年でしたが、 当時の携帯電話はSMS送信はできず、受信と表示が可能なだけで、 それさえも、全ての携帯電話でできるわけでもありませんでした。 1994年までには、新機種の携帯電話は全てSMSの受信ができるようになりました。 1995年までには全てのネットワークがSMSをサポート可能になり(GSMウェブサイトより)、 SMSの国際ローミングも可能になりました。この頃にSMSは若者に発見され、その文化の一部となり始めました。 1996年には新機種の携帯電話全てでSMSの送信ができるようになりました。
1990年代、携帯電話のキーパッドでSMSを編集するのは、骨の折れる作業でした。 26個のアルファベットが、キーパッド上の(1と0を除く)8個の数字に割り当てられていたのです。 数字の2を1回押すと‘a’が入力され、2を2回押すと‘b’が入力されるといった具合です。 ‘hello’と綴るには、ユーザーは44-33-555-555-666と押さねばなりませんでした。 それにも関わらず、音声通話よりも安い料金と新しいコミニュニケーション手段を利用したい、という若者たちの意欲によって、 SMSは若い世代の間で思いがけず人気を博したのです。
キーパッドが押された時に、推測から単語を作成する予測入力方法であるT9がリリースされる(英語)と、 ユーザーは“hello”のためには4-3-5-5-6とだけ押せばよくなりました。 その後数年に渡るQWERTYキー配列のPDAフォンの到来、そして続くスマートフォンのタッチスクリーンの登場で、 SMSの編集はずっと簡単で速くなりました。 タイピングをもっと高速にするための努力はSwype入力方式(英語)のように続けられています。
業界で多くの開発が行われ、SMSが簡単に大量送信できるようになるのとともにビジネスコミュニケーションツール として利用されるようになり、SMSの長さも目的の送信先にブロードキャストする前に容易にチェックできる ようになりました。
近年、Whatsapp、Line、WechatやMessangerといったモバイルブロードバンド上でのアプリを介したインスタントメッセージングの人気に押され、 SMSはやや減少気味かもしれません。それでもなお、ビジネスまたは個人向けの用途 で依然として幅広く利用されているテクノロジーです。 今から振り返れば、大衆に利用されたことによるSMSの成功というのは、このサービスを最初に定義または提供した人々にとっては、意外なことだったのですが。