最高の認証は、一つじゃない

その入口は、一つでいい?

前回のEngineering Timeでは、

「認証は、入口になった」

という話をしました。

認証は、ユーザーを止めるための門ではなく、 その先の仕事やサービスへ進んでもらうための入口。

『入口が開けば、中に入れる』ように、認証を済ませると そのまま内部処理が始まり、完了するシステムなら、 ユーザーは認証のみを行えばいいことになります。

では、その入口について、もう少し考えてみます。

顔認証。

指紋認証。

Passkey。

パスワード。

SMSで届くワンタイムパスワード。

電話を使った認証。

さまざまな方法があります。

では、この中でどれが一番いいのでしょう。

そもそも、その入口は、一つでいいのでしょうか。

答えは、「これです」と、一つに決められるものではないのかもしれません。

使う人も、使う場所も、一つではない

システムを使うのは、人です。

そして、人はいつも同じ場所、同じ端末、同じ状態でシステムを使うわけではありません。

いつものスマートフォンからアクセスする人。

新しい端末に買い替えたばかりの人。

パソコンから利用する人。

外出先からアクセスする人。

顔認証がうまくいかないこともある。

端末がPasskeyに対応していないこともある。

パスワードを忘れることもある。

SMSをすぐに受け取れない状況もある。

電話には出られない場所にいるかもしれません。

ということは、どんなに便利な認証方法でも、

「すべての人、すべての状況にとって最高」とは限りません。

「認証できません」で終わらせない

たとえば、顔認証を使ったサービスがあるとします。

いつもなら、

顔を認証する。

本人確認ができる。

その先のサービスへ進む。

とてもシンプルです。

でも、その日はうまく認証できなかった。

そこで、

「認証できませんでした。」

と終わってしまったらどうでしょう。

前回の記事で考えた「入口」が、今度は本当に人を止める門になってしまいます。

そこで必要になるのが、

「この方法が使えなかったら、次はどうする?」

という設計です。

目的へ続く、別の道を考える

たとえば、

顔認証が使えない。

では、別の認証方法は使えるだろうか。

Passkeyが利用できない。

では、別の安全な本人確認方法はあるだろうか。

SMSを受け取れない。

では、ほかに本人確認へ進める方法はあるだろうか。

ここで大切なのは、

顔認証 → Passkey → SMS → Voice

という順番そのものではありません。

サービスによって必要なセキュリティの強さも違えば、ユーザーの環境も違います。

大切なのは、

一つの道が使えなかったとき、その人はどうすれば目的へ進めるのか。

そこまで考えておくことです。

選択肢が多ければ、安全とは限らない

ただし、認証方法をたくさん用意すれば、それだけで良いシステムになるわけでもありません。

強い認証方法を用意していても、別の簡単な方法を使えば誰でも通れてしまうのであれば、そこがシステム全体の弱点になる可能性があります。

だから、

「使いやすくするために別の道を用意する」

ことと、

「安全性を保つ」

ことを、同時に考える必要があります。

また、複数の認証方法を組み合わせることで安全性を高める方法もあります。

一つの方法が使えなかったときのために別の道を用意すること。

安全性を高めるために複数の要素を組み合わせること。

似ているようで、目的は同じではありません。

選択肢を増やすことそのものではなく、なぜその方法が必要なのかを考える。

それも、認証設計の大切な部分です。

「最高」は、ユーザーによって変わる

新しい認証技術が登場すると、

「これからは、この方法がいい」とか

「新しい時代になった」

と思うことがあります。

もちろん、新しい技術によって認証は便利に、安全になっていきます。

でも、システムを使う人の環境まで、同じ速度で一斉に変わるわけではありません。

使っている端末も違う。

通信環境も違う。

サービスを使う場所も違う。

そして、ときには失敗もします。

だから、一つの「最高」をすべての人に当てはめるのではなく、

その人が、その状況で、安全にその先へ進めること。

それを考えて設計する。

それが、ユーザーにとっての「最高の認証」に近づく方法なのかもしれません。

Engineering Time

認証方法を選ぶとき、

「どれが一番いいのか?」

と考えることがあります。

でも、本当に考えたいのは、

「この方法が使えなかったら、次はどうする?」

なのかもしれません。

人は一律ではありません。

使う端末も、場所も、状況も違います。

だからシステムも、一つの正常な道だけではなく、 必要に応じて安全に目的へたどり着ける別の道を考えておく。

最高の認証は、一つじゃない。

一つの方法を選ぶことではなく、 その先へ進める道まで考えること。

それも、人のためのシステム設計だと思います。

横山 愛子

横山 愛子

顧客支援及び運営担当

2014年1月に入社。関西外国語大学卒業後、貿易商社での勤務、オンラインストアの立ち上げ、運営、15年に亘る海外在住経験あり。幅広い視野を持って、お客様とのコミュニケーションに努めたいと思っております。