世界各地で数年前から行われてきた以下の一連の試みを経て、最初のGSMシステムの発表から約30年となる2020年頃、新しい5Gシステムが発表されそうだ。
早くも2012年には、ITU-R (国際電気通信連合無線通信部門) が2020年以降の 国際移動通信システム に取り組むための活動、 IMT-2020を立ち上げている。それによると下り20 Gbps、上り10 Gbpsのそれぞれのデータ転送速度をはじめ、様々な要件が含まれている。 これが5Gの要件の基盤となっている。
数年間議論を繰り広げながら、最大10 Gbpsのデータ転送速度をサポート可能な膨大な帯域幅を提供する周波数帯を探し求めた末、 2015年までには業界各社は28GHzの周波数帯でおおよそ一致することとなった。 そして、ミリ波 (mmWave) とも呼ばれるこれらの超高周波数用コンポーネントの設計の研究開発に力が注ぎ込まれた。
mmWave周波数帯の電波の物理的性質のため、移動通信のこれまでの世代で利用されたUHF周波数帯とは異なり、 酸素や水蒸気の分子による吸収損失といった減衰損失の要因が重要になってきた。 それだけでなく、mmWaveの信号は建物の壁を貫通することができず、屋内での受信が課題となり、通信可能範囲に大きく影響する。
無線周波スペクトル諮問グループは2016年11月、5G周辺に関連した重要意見を公表 し、 それをきっかけに、以前に検討された28GHz周波数帯と比較すると通信可能範囲の改善に有利な3.6 GHzと 700 MHzという新たな周波数帯を5G向けに世界中で検討するようになった。 しかし、低い周波数帯は国によって衛星通信と直接競合してしまう。 それにもかかわらず、業界と監督機関が暫定の5Gスペクトル周波数帯について、「1 GHz以下、1 GHzと6 GHzの間、6 GHz以上」とすることで意見を統一させた。
意欲的な研究開発活動が行われたにもかかわらず、各国が優先的に選ぶスペクトル、 そして28GHz周波数帯の場合は屋内通信可能範囲を広げるのに徹底的な考察とプラニングが必要であるなど、 まだ解決されていない現実的な問題が残っている。
2018年2月25日には、ファーウェイが理論上の下り速度で最大2.3Gbpsを実現する初の商用5Gモデム、 Balong 5G01 を発表した。
2018年6月13日には3GPPにより、完全な5G技術仕様が承認され、Release 15としてリリースされた。
モトローラは2018年8月3日、米通信事業者のVerizon とともに、後に発売される5Gモデムで5Gへのアップグレードが可能な初の携帯電話、 Moto Z3 発売 (480ドル) を発表した。 発表当時、5G商用ネットワークは準備が整っていなかった。
それと同じころ、ソニーは同社の5G携帯電話、Xperia XZ3の開発が進行中であることを発表した。 ファーウェイはMate 30もしくはP30とP30 Proを5G携帯電話にすること、Samsung電子はGalaxy S10に5G機能が搭載されることをそれぞれ発表した。 LGとOnePlusもそれぞれの5G スマートフォンを発売する。これらはすべて2019年上半期に登場する見込みになっている。
2017年5月18日には、セルコムによるマレーシア初の5G試験 がエリクソンの協力のもと18Gbpsのデータ転送速度を達成し、完了した。 これは、28GHz周波数帯で実施された東南アジア初の5G試験でもあった。これは2022年もしくは2023年ごろの商用化が見込まれている。
日本では、NTTドコモがファーウェイ、NEC、エリクソンなどのベンダー各社と共に2018年に 多数の試験 を実施しており、39GHzミリ周波数帯を使ったIntegrated Access Backhaul (IAB) 技術のデモ成功、 時速300kmを超える超高速移動環境での世界初の5Gワイヤレスデータ転送、高速車両で8Gbpsのスーパー高速コミュニケーションを実現する 世界初の28 GHz周波数帯互換アンテナなどを実現させている。 その他ソフトバンクやKDDIも、複数のベンダー各社と協力して積極的に各種試験を実施している。 日本は2020年の東京オリンピックに向けて5Gを準備する見通し。
5Gはネットワークに以下の新しい技術やテクニックを用いて実現される見通しとなっている。
• クラウドRAN (cRAN)
• マッシブMIMO
• アクティブアンテナユニット (AAU)
• ヘテロジニアスネットワーク (HetNet)
• デバイス間コミュニケーション (D2D)
5G関連の研究開発は今も進行中で、多くの進展が今後数年間に明らかになることだろう。