我々がブートストラップで事業をはじめたのは2007年2月だから、もう丸12年になろうとしています。 あの頃は、特にテック系では、ブートストラップで起業する人が周りには誰もいませんでした。 「ブートストラップ」という言葉自体も、当時は「起業」という意味合いがなく、特にLinux系のOSを組む時に起動時を 指す方法の意味だったとか。まったくビジネスや起業とは、関係がなかったんです。

この3年間ぐらいの間に、テック系だとほとんど、VCからお金を受けてユニコーンを目指すやら、億単位の調達成功やらの話ばっかりで、 もはや『テックで起業をするなら億単位の資金を調達しないと起業ではない』のような世の中になってきてる気がしますが、 このような起業やライフスタイルのオプションも実際に可能だと、もっと皆さんに知ってほしいです。

なので、今回はじめて12月18日に開催されるBootstrap Night vol. 4に 参加することを楽しみにしていました。

Bootstrap Night!

メンバー3人で、有料ライセンス1000契約獲得の道のり

主催者である合同会社 selfreeの代表の小俣さんによる最初のプレゼンでmeetupが始められました。

なぜ、そもそもブートストラップで起業したのか?外部資金を受け取ったらで急成長しないといけないプレッシャーがあって そうしなければ完全コントロールできるから、ブレるリスクも少なくなるとか。ポイントとしては、できるだけリスクを 少なくして自分達のペースで事業を運営し成長させる、ということ。

  • 完全に自分のプロダクトをフォーカスするため、受注開発をまったくやらず
  • 起業前準備としては、貯金していた
  • 初期開発とその後のリリースのあいだは、貯金を崩して生活していた
  • あの頃一番大事なポイントとしてどれだけ最低限な生活をできるか、そのための費用を確保した
  • 実家暮らしで、だいたい月に15万円で頑張っていた。時間が空いたら、副収入に回した
  • 最初のリリースをしてから1年半のあいだ、給料なしで生活していた

1000契約まで獲得できるのは、単純に地道の努力という。ですよね、当たり前と思いますが、足と汗が結局のところ 成果を出してくれることが多い。

  • リリースした後、最初の3ヶ月で総員で1日50メールひたすら送っていた
  • カスタマーサポート、カスタマーサクセス、事例を作るのに力を入れていた
  • あとユーザーミートアップも実施

そのあと、プロダクト開発とビジネス全般の考え方としては、

  • 開発思想 機能追加より機能改善
  • 1つの問題をどこよりも早く、簡単に解決する
  • 余計に仕事を増やさない。人を必要以上入れない
  • しっかり休むこと

当たり前でも、ブートストラップビジネスを成功させるための秘訣というのは、やっぱり 「我慢と努力」ということでしょうか。

プログラミングスクールの作り方

次の登壇者は合同会社フィヨルドの駒形さん 主な事業はサイトの構築やゲームサイトの開発を行っていますが、その他プログラミングスクール も現在運営しています。

インターンからはじめて作業をしながらプログラミングを学んでいく、というモデルから、 プログラミングスクールに形を変えて卒業生を紹介して企業に就職させるというモデルに 変わったビジネスの苦労話など。

当初はお金を取らずに、来る者拒まず、去る者を追わずというスタンスでインターンとして 受けいれて、プログラミングなどを勉強させながら会社の作業をお願いしていたようですが、少しずつ いろんな問題点を解決しながら、現在の企業就職モデルに転換したそうです。

いろいろやってきて、現在に至っては 1つの結論として「プログラミングスクールも楽じゃない」 ということだったそうです。まぁ、そうでしょうね。

Doorkeeper 利益生むまでの道のり

最後の登壇者は、Ruby界ではかなり知られている DoorkeeperのPaulさん (ごめんなさい、私はRuby使ってません)

今回の発表ではDoorkeeperに関する売上や手数料の数字が多くったので面白かったですが、Paulさんが 写真撮影や会場外に漏らすこと禁止しているので書けないですが、

  • Doorkeeperは2011リリース当初からサイドプロジェクトのため、確立できるビジネスモデルはなく(考えてなかった)
  • はじめての売上は、Paypalを導入したときから。Paypalの導入もどっちかというと本人確認のためだった。 でもUXはあまりよくなかった
  • ビジネスとして成り立てるモデルの手探り状態だった
  • 手数料と固定手数料などを、まず導入した
  • それでも売上と、イベント利用の数比例的に、あまりうれしくない数字だった
  • イベント手数料を軸にビジネスモデルにするには、膨大のチケット売上が必要。ブートストラップには難しい
  • 6年間赤字運営 閉鎖考えていた
  • 有料サービスとして転換して立ち直った

Paulさんの話を聞いていて、サービス(特にSaaS系) やプロダクトのプライシングはとても重要で、 そのプライシングを決めるには、単純に絶対の数(例えば、どのぐらい使ってるのか)に対する対価ではなく、 お客様がそのサービスを使う上の価値に対する対価にするべきだと、と改めて思いました。

お客様からすると、どれだけあるサービスが便利で、どんなメリットをもたらすこと を見極めることがとても大事です。

最後に

発表のあと、ピザとビールなどを飲みならが参加者との間の交流会がありました。ブートストラップ 起業に対する思いとか、首都圏にもう飽きて地元にUターンして地元に何か立ち上げて貢献したいとか、 という方もいました。まだ少ないですが、最近、自分の周りにそのような人が増えてきてる気がします。

最後に集合写真をとって解散しました。

Bootstrap Night! 集合写真

今回初参加させてもらいましたが、ブートストラップで起業する人は日本にはまだまだ少ないですが、確かなのは我々みたいに ビジネスモデルが確立されていて、運営の回っているテック企業は存在します。また、そのライフスタイルと起業スタイルに興味をもって 挑戦したい人たちもいる、との印象をうけました。

日本は、アメリカとかのような国と比べたら業界全体の構造的な課題や社会的な課題もまだまだあることから 急激にブートストラップで起業する人が増えると思わないが、少しでもこのような起業スタイル、 ライフスタイルまたは夢を実現させる方法のひとつの選択肢として知られ、挑戦してみる人が増えたら嬉しいです。

イクバル・アバドゥラ

イクバル・アバドゥラ

取締役

1997年に来日。佐賀大学の理工学部を卒業しヤフー株式会社、アマゾン株式会社を経て2007年に株式会社Xoxzoの前身である株式会社MARIMOREを設立。 PyCon JPにもボランティアとして活動しています。合同会社LaLoka Labsの代表。